WordPressとCMSの基礎知識 – なぜWordPressが選ばれるのか?
- 2025/06/26
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- Wordpressの基礎
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前回の記事で、Webサイト構築の5つの方法を比較し、CMSテンプレート自作が最もバランスの取れた選択肢であることを確認しました。
今回は、その中核となるWordPress(ワードプレス)について詳しく学んでいきます。ただし、単純にWordPressの機能を説明するのではなく、そもそもCMSとは何なのか?なぜWordPressが圧倒的に選ばれているのか?という根本的な理解から始めていきます。
重要 この記事では概念的な理解を重視し、具体的な操作方法や環境構築は次回以降で詳しく解説します。
CMSとは何か? – コンテンツ管理の革命
CMSの正式名称と基本概念
CMS = Content Management System(コンテンツ管理システム)
CMSとは、Webサイトのコンテンツ(文章、画像、動画など)を、技術的な知識がなくても簡単に管理・更新できるシステムのことです。
CMS登場以前の問題
従来のWebサイト更新の流れ
- 文章や画像を変更したい
- HTMLファイルを直接編集する
- CSSでデザインを調整する
- FTPでサーバーにアップロードする
この方法では、ちょっとした文章の修正にもHTMLの知識が必要で、一般の人には更新が困難でした。
CMSが解決した革命的な変化
CMS導入後の更新の流れ
- 文章や画像を変更したい
- 管理画面にログインする
- Wordのような編集画面で内容を変更する
- 「更新」ボタンをクリックする
この変化により、プログラミングの知識がない人でも、Webサイトを自由に更新できるようになりました。
CMSが提供する主な機能
コンテンツ管理機能
- テキスト・画像の簡単な追加・編集・削除
- ページの追加・削除・並び替え
- カテゴリーやタグによる分類
ユーザー管理機能
- 複数人での管理・更新作業
- 編集権限の設定(管理者、編集者、寄稿者など)
- ログイン機能による安全な管理
デザイン管理機能
- サイト全体のデザインを一括管理
- テンプレート(テーマ)の切り替え
- レスポンシブデザインの自動対応
WordPressとは何か? – CMSの王者
WordPressの基本情報
WordPress(ワードプレス)は、2003年に開発されたオープンソースのCMSで、現在世界で最も多く使われているCMSです。
重要な特徴
- 無料で使用可能(オープンソースソフトウェア)
- 世界中の開発者によって継続的に改良
- 商用利用も完全に自由
WordPressの圧倒的な市場シェア
世界での利用状況(2024年現在)
- 全Webサイトの約43%がWordPressで構築
- CMS市場では65%以上のシェアを占有
- 毎日数万のサイトが新たにWordPressで構築されている
日本での利用状況
- 企業サイトの約80%がWordPressを採用
- Web制作案件の90%以上でWordPressスキルが求められる
- フリーランス案件でも最も需要の高い技術
なぜWordPressがこれほど普及したのか?
1. 使いやすさ
- 直感的な管理画面
- 専門知識がなくても操作可能
- 豊富な日本語情報
2. 柔軟性
- シンプルなブログから複雑な企業サイトまで対応
- 無限のカスタマイズ可能性
- 様々な業種・用途に適用可能
3. 拡張性
- 6万種類以上のプラグイン
- 数千種類のテーマ
- 独自機能の開発も容易
4. コミュニティ
- 世界最大のCMSコミュニティ
- 豊富な学習リソース
- 活発な情報交換
WordPressの技術的な仕組み – PHPとデータベース
WordPressはPHPで作られている
PHP(ピーエイチピー)は、Webサイト開発に特化したプログラミング言語です。WordPressの核となる部分はすべてPHPで書かれています。
PHPの特徴
- サーバーサイド言語:サーバー上で動作する
- Web開発に特化:HTMLとの親和性が高い
- 学習しやすい:文法が比較的シンプル
- データベース連携が得意:MySQL等との連携が簡単
データベース(MySQL)との連携
WordPressはMySQLというデータベースシステムを使用して、サイトの情報を保存・管理しています。
※ MariaDBでも動作可能ですが、MySQLが最も安定しており推奨されています。多くのレンタルサーバーでもMySQLが標準採用されています。
データベースに保存される情報
- 投稿記事の内容
- ページの内容
- ユーザー情報
- サイトの設定情報
- コメント情報
なぜデータベースが必要なのか?
従来のHTMLサイトでは、各ページが個別のファイルとして存在していました。しかしWordPressでは
- 記事を投稿 → データベースに保存
- ページを表示 → データベースから情報を取得してHTMLを生成
- 動的にページを作成 → 同じテンプレートで様々なページを表示
この仕組みにより、効率的なコンテンツ管理と柔軟なサイト運営が可能になります。
WordPressの動作フロー
ユーザーがページを見る時の流れ
- ユーザーがURLにアクセス
- Webサーバーがリクエストを受信
- PHPがデータベースから必要な情報を取得
- PHPがHTMLを動的に生成
- 生成されたHTMLがユーザーのブラウザに送信
- ブラウザがページを表示
この動的な生成こそが、WordPressの柔軟性の源です。
WordPressの動作環境 – 必要なもの
WordPress動作に必要な3つの要素
WordPressを動かすためには、以下の3つの要素が必要です
1. Webサーバー(Apache/Nginx)
- Webサイトのファイルを保存・配信するサーバー
- ユーザーからのリクエストを処理
- 最も一般的なのはApache
2. PHP
- WordPressのプログラムを実行する言語処理システム
- データベースとの連携を担当
3. MySQL(データベース)
- サイトのコンテンツやユーザー情報を保存
- 高速な検索・取得が可能
- WordPressが標準的に使用するデータベース
レンタルサーバーなら全て含まれている
本格運用にはレンタルサーバーがおすすめ
Webサイトを一般公開する場合は、レンタルサーバーの契約が必要です。現在のレンタルサーバーは、WordPressに必要な環境がすべて最初から用意されています。
主要レンタルサーバーの対応状況
- エックスサーバー:WordPress簡単インストール機能付き
- ロリポップ:ワンクリックでWordPress設置
- さくらのレンタルサーバー:WordPress専用プラン有り
- ConoHa WING:WordPressかんたんセットアップ
レンタルサーバーを契約すれば
- Webサーバー
- PHP
- MySQL
- WordPress
すべてが自動的に利用可能になります。
開発・学習段階では契約不要
ただし、WordPressの学習や開発段階では、レンタルサーバーを契約する必要はありません。自分のパソコン上で開発環境を構築することで、費用をかけずにWordPressを学習できます。
開発環境のメリット
- 完全無料:課金の心配がない
- 自由な実験:失敗を恐れずに試行錯誤できる
- 高速な動作:自分のパソコン上で素早く確認可能
実際のサイト公開は、十分に学習・開発を進めてからで問題ありません。
WordPressの核心機能 – テーマとプラグイン
テーマ – サイトの外観を決める
テーマとは? WordPressの「外観・デザイン」を決定するファイル群です。テーマを変更するだけで、サイト全体のデザインを瞬時に変えることができます。
テーマの仕組み
- PHPファイル:ページの構造を定義
- CSSファイル:デザイン・装飾を定義
- JavaScriptファイル:動的な機能を定義
- 画像ファイル:デザインで使用する画像
テーマの種類
1. 公式テーマ
- WordPress公式ディレクトリで配布
- 厳格な審査を通過した高品質テーマ
- 完全無料で安全
2. 商用テーマ
- 有料で販売されているプレミアムテーマ
- 高機能・高デザイン品質
- サポートやアップデートが充実
3. オリジナルテーマ
- 完全に自作するテーマ
- 無限のカスタマイズが可能
- 当シリーズで習得する技術
プラグイン – 機能を拡張する
プラグインとは? WordPressに新しい機能を追加するソフトウェアです。スマートフォンのアプリのような感覚で、必要な機能を後から追加できます。
代表的なプラグイン例
SEO対策
- Yoast SEO:検索エンジン最適化
- All in One SEO:総合的なSEO機能
セキュリティ
- Wordfence Security:不正アクセス防止
- SiteGuard WP Plugin:日本製セキュリティプラグイン
バックアップ
- UpdraftPlus:自動バックアップ
- BackWPup:多機能バックアップ
お問い合わせフォーム
- Contact Form 7:日本で最も人気
- WPForms:ドラッグ&ドロップで作成
プラグインの利点
- 簡単インストール:ワンクリックで機能追加
- 豊富な選択肢:6万種類以上が利用可能
- 多くが無料:基本機能は無料提供
プラグインの注意点
- パフォーマンス影響:多すぎると動作が重くなる
- セキュリティリスク:信頼できるもの選択が重要
- 競合の可能性:プラグイン同士が干渉する場合あり
ダッシュボード – コンテンツ更新のしやすさ
ダッシュボードとは?
ダッシュボードは、WordPressの管理画面のことです。ここから、サイトの全ての管理・更新作業を行うことができます。
まるでWordのような編集体験
従来のWebサイト更新
<h1>会社概要</h1>
<p>弊社は2010年に設立された...</p>
<img src="image.jpg" alt="オフィス写真">
↑HTMLを直接入力
WordPressでの更新
- 見出し:文字を選択して「見出し」ボタンをクリック
- 本文:普通に文章を入力するだけ
- 画像:ドラッグ&ドロップで挿入
まさにMicrosoft Wordと同じような感覚で、Webサイトの更新ができます。
ダッシュボードの主要機能
投稿・ページ管理
- 投稿:ブログ記事、ニュース記事の管理
- ページ:会社概要、サービス紹介などの固定ページ
- カテゴリー・タグ:記事の分類管理
メディア管理
- 画像・動画のアップロード:ドラッグ&ドロップ対応
- メディアライブラリ:アップした画像を一元管理
- 画像編集:基本的な画像編集機能
外観管理
- テーマ:サイトデザインの変更
- カスタマイザー:リアルタイムでデザイン調整
- メニュー:ナビゲーションメニューの編集
ユーザー管理
- 権限設定:管理者、編集者、寄稿者などの役割分担
- 複数人運営:チームでのサイト管理が可能
リアルタイムプレビュー機能
WordPressのカスタマイザー機能では
- 左側で設定を変更
- 右側でリアルタイムに結果を確認
- 気に入ったら「公開」、気に入らなければ「キャンセル」
この機能により、安心してデザインの調整ができます。
モバイル対応も自動
現代のWordPressテーマは、レスポンシブデザインに標準対応しています。
つまり
- PC用のコンテンツを更新するだけ
- スマートフォン用のデザインは自動調整
- タブレット用の表示も自動対応
1回の更新で、全デバイスに対応できます。
なぜWordPressが選ばれ続けるのか?
技術的な優位性
1. 柔軟性と拡張性の両立
- シンプルなブログから複雑な企業サイトまで対応
- プラグインによる無限の機能拡張
- カスタマイズの自由度が非常に高い
2. SEO(検索エンジン最適化)に強い
- 検索エンジンに好まれる構造
- SEO対策プラグインが豊富
- 表示速度の最適化が可能
3. セキュリティ対策が充実
- 定期的なセキュリティアップデート
- セキュリティプラグインが豊富
- 大規模なコミュニティによる脆弱性の早期発見
ビジネス面での優位性
1. コストパフォーマンスが最高
- ソフトウェア自体は完全無料
- レンタルサーバー代のみで運用可能
- 長期的な運用コストが非常に安い
2. 人材確保が容易
- WordPress技術者が豊富
- 学習リソースが充実
- 後任者の引き継ぎが簡単
3. 将来性がある
- 継続的な開発・改良
- 最新のWeb技術への対応
- 長期間の安定運用が可能
エコシステムの強み
巨大なコミュニティ
- 世界中の開発者が参加
- 日本語情報も非常に豊富
- 問題解決の情報が見つけやすい
豊富なリソース
- 6万種類以上のプラグイン
- 数千種類の無料・有料テーマ
- 学習用のチュートリアルが豊富
企業サポート
- Automattic社による継続的な開発
- 大手企業での採用実績
- 長期的な安定性
まとめ:WordPressを選ぶ理由
今回学んだように、WordPressは単なる「ブログシステム」ではありません。現代的なWebサイト制作に必要な全ての要素を備えた、総合的なCMSです。
WordPressの本質
- 技術的な複雑さを隠蔽:PHPやデータベースを意識せずに使える
- 柔軟性と使いやすさの両立:高度なカスタマイズも簡単な更新も可能
- 継続的な改良:常に最新のWeb技術に対応
なぜテンプレート自作を学ぶのか?
既存のテーマを使うだけでも十分なサイトは作れます。しかし、オリジナルテーマの制作を学ぶことで
- 完全にオリジナルなデザインが実現可能
- クライアントの要望に100%対応できる
- 長期的な保守・拡張が自由自在
- プロフェッショナルなスキルが身につく
次回予告:WordPress開発の準備を始めよう
WordPressとは何かを理解したところで、いよいよ実際にWordPressに触れてみる段階に進みます。
次回のテーマ
WordPressを実際に動かしてみる
まずはWordPressがどのように動作するのかを、実際に体験してみましょう。理論的な理解から実践的な経験へ、大きな一歩を踏み出します。
WordPressの管理画面に触れ、投稿やページの作成を体験し、テーマの切り替えを試してみることで、WordPressの可能性と仕組みをより深く理解できるようになります。
次回から、いよいよ実践的なWordPress学習が始まります。理論の理解から実際の制作技術習得へ、一緒にステップアップしていきましょう!
WordPressオリジナルテーマ制作への第一歩を、一緒に踏み出しましょう。
